双生モラトリアム

(……いつか、止めなきゃいけないのはわかってる……)

でも、今はまだ……
樹に求められてるだけで嬉しい……なんて。バカな自分がいる。
私の初恋は、樹だった。
妹の舞も、樹に初恋をした。

当然、選ばれたのは舞。

私たち姉妹が中学を卒業した年に、舞と樹は婚約した。


狭いアパートで脱衣場はなく、洗面台の向かいがそのまま浴室になってる。
服と下着を脱いで洗濯かごに入れると、自分の姿が鏡に映った。
体重は標準だけど、丸顔だし骨太で太って見えるのが嫌だった。顔も地味で肌も白くないし、クセが強い太い髪の毛はさらさらと無縁で、ずっと短くしてきた。
でも、それだけが理由じゃない。

双子の妹の舞は細身でスタイルがよく、ほっそりとした顔立ちの美人。さらさらの髪は美しくて、長く伸ばし脱色してアレンジを楽しんでた。

彼女は姉の私より背が高いうえに、自尊心もものすごく高い。
何をしても優秀で才色兼備。その上交遊範囲も広く、小学生の頃にはもうついていけなくなっていた。

“お姉ちゃんはどんくさいから嫌い!”

そう、ハッキリと小学3年生で言われてからだった。舞から明らかに嫌われだしたのは。
それ以来、ことあるごとに舞は私へ辛辣な言葉を浴びせてきた。

“どんくさい”
“嫌い”
“ムカつく”
“姉妹って言われたくない”
“近づかないでくれる?”

多分、誰もがそう思うもっともなことだと思った。

だから、私は。舞が髪を伸ばしたら髪を切った。白い肌なら日焼け止めを止めて。髪を染めるなら黒いままでいようとした。
メイクも、念入りなら手抜きしようとして。華やかな女性らしい格好なら、地味でボーイッシュな格好を心がけた。

正反対なら、比べられても傷が深くならないから。
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