御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


でも……東堂さんの表情が、土曜日のお見合いの時のような無機質なものとは違って見え不思議に思う。

無表情は変わらないのだけれど、あの時みたいな冷たい感じがしない……?
雰囲気が変わったように感じる東堂さんを、ただじっと見つめてしまっていると、東堂さんが口を開く。

「春野ひなた……さん」
「あ……は、はい」

そこで初めて自分が座ったままだと思い出し、慌てて立ち上がる。
すると東堂さんは、私の前、カウンターの上にメモを置いた。

手にとって確認すると、書いてあるのは、なにかのお店の名前のようだった。それに住所と電話番号……十九時、という時間。
綺麗な字だった。

「ここを今日の十九時に予約した」と言われ、顔を上げる。

「土曜日は悪かった。そのお詫びをさせて欲しい」

そこには真面目な顔をした東堂さんがいて、言葉を失う。
けれど「都合悪いか?」とやや心配そうに聞かれたので、気付けば慌てて首を振っていた。

「いえ」
「じゃあ、十九時に。……ああ、これも一応渡しておく」

そう言って差し出されたのは、東堂さんの名刺だった。
〝東堂プロダクツ〟という社名の下には〝副社長〟の役職と〝東堂晃成〟の名前が並んでおり、代表番号だけでなく仕事用の携帯番号が書かれている。

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