能力を失った聖女は用済みですか?
「はいっ!次ぃ!次持ってきてー!」

油で揚げられたルナシータは、流れ作業で次に待つシータに渡され、私は空いた鍋の前で威勢良く叫ぶ。

「どうぞ!お待たせしました、ルナさんっ!新しいイモです!」

「うん!ありがと!」

両手でカゴを抱え、イズールは鍋にイモを放り込んだ。
ジュワーと良い音をさせながら、イモはその身をこんがりと焦がしていく。
甘い匂いが充満し厨房に熱気が籠ると、イモを次に渡して帰ってきたシータが、出来上がりを待ち覗き込む。

全員一丸となって望む作業は、重労働だけどなぜか楽しい。
一日の終わりにはぐったりして、死んだように眠りに落ちるけど、それは幸せな疲労感のせいなのである。

そうして、労働力フル回転で商品化されたルナシータは、最初の受注先であるアッサラームへと旅立った。
各国と取引のあるアッサラームなら、広告力もかなりのものだし、それに加えて「アッサラーム王室御用達」の宣伝文句もつく。
後はルナシータを気に入ってくれて、受注が入ればいいのだけど、結果が出るには今暫くかかりそうだ。
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