能力を失った聖女は用済みですか?
「いや、でも……このくらいのことで……」

私の反論に今度はナヤンが口を挟んだ。

「お嬢さんがイモの苗を植えるのを提案してくれたのだろう?お陰でワシらはひもじい思いをしなくてすむんだよ?それだけで、大したことさ」

「そ、そうですか?でも……」

「ルナ。人生の先達の褒め言葉は素直に受け取っておけ。それらはだいたい正しい」

黙って聞いていたカイエンが、優しく言う。
すると、老人達が「そうじゃ、そうじゃ」と口々に同意した。
ロランにいた時は、全てがやって当然で、誰かから感謝されることも誉められることもなかった。
だけど、当たり前のことでも誉められたり感謝されるのは嬉しい。
何か、自分が認められたような気になるから……だと思う。

「はい。皆さん、ありがとうございます。私、これからも皆さんのために出来ることを、自分なりに探していこうと思いますっ」

私が決意を込めて言ったのに、老人達は「真面目か!」「固いわ」「もっと適当でええんじゃ」と、ダメ出しを返してくる。
でも、それが親愛の情だというのはすぐにわかった。
彼らの表情は、まるで娘や孫を見るように柔らかだったからだ。

「はははっ。ルナ、口うるさい家族が沢山出来たな?」

カイエンがからかうように言うと、老人達の矛先が変わった。

「おやおや、カイエン様も言うようになりましたな?」

「そうじゃな。さすが、お妃様を貰うと貫禄が出るわい」

「お、おいっ!」

思わず叫んだカイエンを見て、どっと笑いが巻き起こり、集会所の中はふんわりと暖かな空気に包まれた。
そして、寂しかったアルバーダに、ほんの一時、活気が溢れた。
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