泣いてる君に恋した世界で、
ふたりが帰ってきた頃には手紙は書き終えていて、今は俺の隣で眠っている。目は泣き腫らした特有の色に染まっていてそっと頬を撫でた。
きっとふたりも眠っている羽星の様子には気付いているだろう。揃って頭をやさしく撫でるから。ただばあちゃんだけは俺の頭も撫でた。
それから「じいちゃんはだめね〜」と一人洗面所へ向かった方を見て笑った。
その瞬間喉元に熱をもった。目頭にも熱が込み上げてくるからバレないように俯いた。
よく見てるなと感心して台所へ向かった背中に「ありがとう」と口ずさんだ。
「親父と母さんに会いたい、か……」
みんなが寝静まった頃。
自室のベッドに寝ながらポツリと呟いた。
考えたこともなかった。ずっと死ねばいいとしか思えていなかったから。別に俺がなにしたから死ぬべきとかじゃなくて、ただ単に生きるべき人は俺じゃない誰かだろって。
特にやりたいことなんて無いし、絶対に叶えたい夢とかも無いし。普通にのらりくらりと生きている俺なんかより生かすべき人がいたんだ。
和希は写真家が夢だとよく言っていた。スマホでも一眼レフカメラで撮ったような画がだせてしまうくらいの腕前で。こっそり出した地域の写真コンクールでよくノミネートされていたのも懐かしい。
親父と母さんは羽星のそばに居るべきなんだ。俺なんか親不孝ものだったから。思い返せば返すほど迷惑ばかりで自分勝手だった。だから喧嘩しかしてないような事しか思い出せない。最期がそう物語っている。
ふと起き上がって、机の引き出しから羽星が書いた手紙を取り出した。
中央に留められた星のシールをゆっくり剥がして1枚引っ張り出す。 “サンタさんへ” と整ってきた字体に成長したなと微笑んだ。
その下には羽星の欲しいものが書かれてある。
だけど今回は違った。祈るような優しい想いがそこには綴られていた。