未来の種
「高等部に手伝ってくれそうな先生がいるんです。兄の友達なんですけど…。一度聞いてみましょうか?」

「本当⁉︎ 美衣子先生、助かるわ〜。今すぐ聞ける?」

「あ、はい。このまま高等部の職員室に行ってみます。」

まだ春休み中だけど、先生方は皆さんいらっしゃるはず。直接行って交渉した方が早い。乾先生…公親(きみちか)くんがOKなら、そのまま教頭にも許可を取っちゃおう。
善は急げと、私は高等部に向かった。




「失礼いたします!
乾先生はいらっしゃいますか?」

「乾先生? ああ、放送室のセッティングに行ってるよ。」

「放送室……ありがとうございます。行ってみます。」

久しぶりに歩く高等部の校舎。懐かしいな。この階段の踊り場の奥に音楽室がある。こっそり入って優と2人で連弾したっけ…。なんの憂いもない、幸せな高校時代だったな。
優…今どうしてる?
パンデミックで、どこの国も大変な状況だ。無事でいるのだろうか…。

< 28 / 91 >

この作品をシェア

pagetop