未来の種
準備 〜side優〜
美衣子が作り置きしていた惣菜を、俺が温めている間、少しでも目の腫れを冷まそうと、美衣子は冷タオルで目を冷やしていた。

「あ、そう言えば、優はこれからどうするの? 演奏活動はしばらく出来ないだろうし、紫おば様のスクールを手伝うの?」

「いや、母さんのところも、暫くは閉めるかもしれない。学習塾なんかも休校なんだって。だから講師もいらないな。将来的には手伝うつもりだけど。」

母はまだまだ現役だし、経営者としての才能もある人だ。俺の手は必要ないかもしれない。

「そっか…。ピアノスクールも学校と同じだよね…。」

「入職早々、自宅待機になりそうだけど、職場は決まったんだ。」

「そうなの⁉︎ え、何するの?」









NYから帰国を伝える電話を母にかけた後、俺はもう一本、別の電話をかけた。
それは父方の伯父、坂上聖(さかのうえしょう)への電話だった。
伯父は聖堂館学園小学校の校長をしている。
これは今後の俺にとって、非常に重要な電話だった。



「伯父さん、俺、優だけど…」

「優? NYからか? どうしてんるだ? 
テレビではロックダウンだって言ってたけど、大丈夫なのか?」

「…うん。俺は大丈夫。1週間後の飛行機が取れたんだ。帰国するよ。」

「……そうか。誠と紫が心配していたからな。飛行機、取れて良かったな。」

「うん。……それで、伯父さんに頼みがあるんだ。」

「どうした?」

「俺に仕事を紹介してもらえないかな。」

< 64 / 91 >

この作品をシェア

pagetop