色のない世界に恋のうたを

「拓実、できたよー」
『俺も風呂掃除し終わった』
「ねぇ、なんかあった?」
『んー、まあ後で話すわ』

そう言って、私が盛り付けた料理をダイニングに運んだ。

『「かんぱーい」』
『あーうまっ』
「このビール美味しいね」

そう言いながらビールを飲んで、ツマミを食べる。
他愛もない話をしながら、録画していたバラエティを2人で見て笑う。

笑うタイミングはいつも決まって同じ。
やっぱり1人で見るより2人で見た方が面白い。

『マジで死にそう笑いすぎた』
「ねえこれ面白すぎる!何回でも見れる」
『ふは、明日も見ようぜ笑』
「朝ごはん食べながらみよっか笑」

結局お気に入りとなったこの番組を、明日もう一度見返すことにした。
明日も拓実と居られる。
その事実が純粋に嬉しかった。

お酒も進みお腹も満たされたころ、お皿を片付けていた。
お邪魔させてもらって、お風呂まで入れてもらったので、皿洗いは私が担当する。
スポンジに洗剤をつけ、泡を滑らせていると、ふと視線を感じた。

「…どうしたの?」
『いや、なんかいいなって』
「何が?…あ、」

最後の1枚を洗いかけた時、私のパーカーの裾が落ちてきて濡れそうになる。

「拓実、ちょっと助けて。これ、」
『おけ、任せろ』

そう言ってキッチンへ来た拓実は、私の後ろに回って背後から右腕と左腕の袖をまくった。
まるで恋愛マンガの1ページのようだ。

「…ありがとう」
『ん、』
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