すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
ーside 沙奈ー



進路のことは、2年の終わり頃から紫苑や翔太からちゃんと考えた方がいいと言われていた。



最初は、未来という漠然としたものが上手く想像なんてできなかった。



2人に、救われたあの日から2人の負担を減らせるように、自立できるように就職の道を選んでいた。



だけど紫苑や翔太、大翔先生と過ごす中で私はある職業について気になっていた。



でも、そうなったら大学に通わなければいけなくなる。



そうしたら、まだまだ2人に負担をかけ続けてしまう。



今までの学費は、ずっと2人に払ってもらっていてその他の生活費のことも2人に頼ってしまっている。



それなのに、中学生の時からお小遣いももらっていたりと、普通の子と同じようにしてもらっていた。



今、改めて考えると血の繋がりがあるわけではない私に、そこまでしてくれるのは本当にありがたいし、たくさんの愛を私に注いでくれていることは、苦しいくらいに伝わっている。



だからこそ、早く恩返しをしたいという気持ちもある。


でも、その気になる職業のことを諦めてしまっても後悔するような気がしていた。



私、どうしたらいいのかな…。



先の見えない不安と、翔太や紫苑にこれからも頼ってばかりでいいのか心配になる。



そんなことを考えていると、大翔先生から電話が入った。




本当にいつも、絶妙なタイミングで電話をしてくる。



まるでどこかで見ているかのように…。




「はい。もしもし。」



「あ、沙奈。体調はどう?」



1年くらい前から、大翔先生は必ず毎日電話をかけてきてくれて、私の体調の心配をしてくれる。




「大丈夫だよ。」




「その声の調子だと…あまり大丈夫じゃないよな。


何か、悩み事でもあるのか?


少し、いつもと違う感じがするけど。」



さすが、大翔先生は声のトーンだけで私の気持ちが分かってしまう。



将来のこと、話していいのかな。



「沙奈?」



「ごめんなさい。


ちょっと、進路のことで悩んでて…。」




「そうか、沙奈ももう高校3年生だもんな。


進路が心配なのか?


それとも、将来の夢があるけどその道に進んでいいのか悩んでいるのか?」



やっぱり、大翔先生の感は鋭い。



「沙奈、もし電話で話しづらいのなら診察の日にゆっくり話そうか?


診察の日じゃなくて、今からでも俺は全然構わないけど。」



「診察の日で、大丈夫。


その日は、紫苑や翔太も仕事の日だから。


その日に、ゆっくり話を聞いてくれる?」



「もちろんだよ。」



大翔先生は、2人と仲もいいから何か分かるかな?



それから、大翔先生と世間話やたわいもない会話をしてから私は電話を切った。
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