王子と社長と元彼に迫られています!
昨夜は暁さんと紬くんのキスと告白のことで頭がキャパオーバーになってしまい、まるで電気のヒューズが飛んだみたいに思考が停止して何も考えられなくなった。

脳は体に、お風呂に入ってからいつもライブから帰った後にするみたいにライブの曲順(セットリスト)通りに音楽をかけてライブの余韻に浸る、という行動に出るように機械的に指示を出した。

体はその指示に忠実に動いたが、大好きな曲達は耳に入って来ても脳まで届かずUターンしてまた耳から出ていってしまった。

脳は次に寝るように指示を出した。枕元のランプをつけて電気を消し布団に横になったものの、全然眠れなかった。

今朝もいつも通り紬くんと一緒に通勤した。ドキドキしながら顔を合わせたけれど、彼は告白などなかったかのようにいつも通りで、昨日のライブの話で盛り上がったので拍子抜けしてしまった。ノリで告白してくれた感じではなかったけれど・・・どういうことなんだろう・・・いくら考えても答えはわからなかった。


───2日連続眠れてなくてキツかったけど、なんとか乗り越えたぞ・・・。来週月曜日が成人の日だから明日から3連休だし、ゆっくり寝て、柚香(ゆか)が予定空いてたら会って話聞いてもらおうかな、電話でもいいし。

とにかく今日は早く帰ろう、と思いながらエレベーターに乗ったが、ボーッとしていたせいで上りに乗ってしまっていた。

───ま、いいか。せっかくだから高層階用のエレベーターに乗り換えて45階(最上階)の展望室で夜景見てちょっと黄昏(たそが)れてから帰ろ。

乗っていた人達が降りていき45階に着いた時は一人だった。このフロアには展望室の他に会社が2つ入っているようだった。

新卒で就職した会社はブラック企業で、昼休みも夏休みもなく会社に泊まり込む日もあった。体を壊す寸前で命からがら逃げるように退職し、このビルで働くようになってから約半年。ここには何度か来たことがあったけれど、まさかこんな気持ちで夜景を見ることになるなんて。
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