王子と社長と元彼に迫られています!
「ひひひ、昼間から何言ってるんですか!?こんなに爽やかな青空の下でそんなアダルトな!」

「?・・・ああ、この言い方だとそういう意味になっちゃうか。悪い、言葉足らずだったな。」

「・・・どういうことでしょう?」

「ちさ、俺の会社に来ないか?」

「・・・え?」

「秘書が退職するんだよ。いわゆるおめでた婚でな。前も言った通り、うちの会社のメンバーは優秀だがクセのあるやつばかりで、業務を円滑に進める為には、お前みたいにコミュニケーション能力の高い人間が必要なんだ。この間の出張で、俺は社長としてお前を逸材だと思った。」

「え、えーと・・・。」

思いもよらない打診に躊躇(ためら)ってしまう。

「俺の一人の男としての感情とは別のところにある、ビジネスとしての話だ。俺としては正社員として迎えたいが、もしお前が契約社員やアルバイトという雇用形態を望むようであれば希望に従う。その場合も今より高い時給と交通費、そして賞与の支給を約束する。」

将来のことを考えなければ、と思っていた私にとって正社員になれるというのは願ってもない話だった。今もチームセクレタリーとしてメンバーのスケジュールや名刺の管理などをしているし、その経験も活かせる。家から近いこのビルで働き続けることが出来るのだ。

「もし、今の会社の派遣期間が終わるまで働き抜きたいというのなら───あと2年半くらいか?───お前が来るまでの期間限定の秘書を雇って待つ。それくらい、俺は会社の為にお前を獲得したいと思っているんだ。人のスキルを見定める目には絶対の自信があるからな。考えておいてくれないか。出来れば今月中に答えが欲しい。」

「は、はい・・・。」

その後黙々とサンドイッチを食べた記憶はあるけれど、その味は全く思い出せなかった。
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