受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される
「これ、は……」

 書状には、『レーヴは獣人化した魔獣の責任を取るべし』という内容が記載され、ご丁寧に国王と司令部の正式なサインまで入っている。

 つまり、この書状の内容は国からの命令であり、逆らうことは死を意味する。レーヴはもちろん、もしもジョシュアが妨害などしようものなら、彼も厳罰の対象になるということだ。

 サインが国王だけ、司令部だけだったならば、どうにか拒否する手立てもあった。それだけの権力を、ジョシュアは有している。
 だが、どちらもとなると、ジョシュアでも無理だ。

 根っからの軍人であるジョシュアがそこまで用意周到に準備されては逆らえるわけもなく、勢いはあっという間に沈静化する。

 しょんぼりと背を丸め、敗残兵の如き哀れな表情を浮かべた彼は、申し訳なさそうにレーヴへ謝罪した。

「すまんなぁ、レーヴちゃん。ここまでされては、わしの力でもどうにも出来ぬ。無念じゃ……」

「おじいちゃん……」

 本当に申し訳なさそうにしているジョシュアに、逆にレーヴの方が申し訳なくなってきた。
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