受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

10

「しっかりと見ていて。君のために、戦うから」

 デュークはジョージを煽るように、レーヴの耳へ唇を寄せてささやく。
 案の定挑発されたらしいジョージは、唇を噛みしめ、湧き上がる殺意を隠そうともしないでデュークを睨みつけた。

「ご武運を」

 レーヴの言葉に頷きを返し、デュークがゆったりとした足取りで訓練場へ戻る。
 ジョージの前へ一歩進んだ瞬間、ギャラリーの熱がぶわりと増した。

 ──熱狂。

 この場には、その言葉がふさわしい。
 第三試合を、誰もが期待に打ち震えながら、固唾を飲んで開始の合図を待つ。

「では、始めよう。魔術はなし。使用するのは剣のみ」

 ジョシュアが、朗々とルールを述べる。
 そして一歩下がり、

「始めっ!」

 試合が始まった。
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