受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される

 レーヴとデュークは、昼休みに短いデートをするようになった。

 二人分になったパンにネッケローブは何かを察してニタニタ笑いかけてきたが、レーヴは知らんぷりだ。

 オマケに入れてくれるラスクがハート型に変化したのはたまたまなのか、それとも遠回しに「知っているぞ」と言われているのか。彼の店にハート型のラスクが並ぶのは期間限定のことだから、おそらく後者に違いないとレーヴは思っている。

(困ったな……)

 こんな時、どうすれば良いのだろうか。
 聞かれてもいないのにペラペラ話したら惚気ているみたいだし、逆に話してみろと言われても戸惑う。

 デュークとの関係は、今のところ曖昧である。
 友だちにしては距離が近く、恋人にしては遠い。限りなく友だちに近い恋人の距離、が近いかもしれない。

 初顔合わせから二週間ほどたったが、一目惚れという奇跡が起きなかった以上、これから見極めていくしかないだろう。
< 75 / 323 >

この作品をシェア

pagetop