初恋彼は甘い記憶を呼び起こす
「すごい抜擢だね。かなり優秀なのかな」

「そうみたい」

「その同期って誰だろ。有希、知ってる?」

 うちは毎年新入社員の数が多いので、同期だとしても全員顔見知りというわけにはいかない。
 全国に支社もあるし、名前も顔もわからない人物はたくさんいるのだ。

「名前を聞いても私はわからなかった」

 有希が知らないのなら、私もきっと同じだろう。大阪支社の人とは私も交流がないからさっぱりだと思う。

「矢沢さんと一緒にもうすぐ来るけど、とにかく同期なら気楽でいいよね」

「たしかに」

 有希の言葉に、その通りだと深くうなずいた。
 同期なら忌憚のない意見だって言えるし、私も有希も仕事がしやすいはず。

 そんなふうに考えていたら、矢沢さんが広報部に入ってくるのが見えた。
 だけど、そのすぐ後に入ってきた人物の顔を見て、私は瞬時に固まってしまう。

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