初恋彼は甘い記憶を呼び起こす
「俺たちはなにもないよ。それに俺は子供が生まれたばっかりで幸せの絶頂なんでね。奥さんを愛してるし、不倫はないわ」
隣で聞いていた矢沢さんが爆笑しながら全否定してくれたのを見て、ホッと胸をなでおろす。
さすがに佐野さんの脳内妄想はこれ以上膨らまないだろう。
私は矢沢さんとは仲がいいけれど、一度も男として意識したことはなく、恋愛感情など微塵もない。それはきっと矢沢さんも同じはずだ。
「だけど篠宮さんって肉食系女子だから、グラッと来ません?」
かわいらしく首をひねりながら、佐野さんが失礼なことを言う。
先輩に対してもまったく遠慮がないし、彼女は本当に怖いもの知らずだと思う。
作ったような高い声も、猫のようにしなった体の動きも、私はあざとく感じてしまって実はあまり好きではない。
わざと空気が読めない発言をしてみたり、男性の前だと態度が違うことがあるので、佐野さんは典型的な“女子に嫌われるタイプ”だ。
彼女が私より年下で先輩後輩の関係だから、ある程度距離を置けるけれど、もしも同い年ならば絶対に友達にはなれないだろう。
「佐野さん、人聞き悪いこと言わないで」
誰が肉食系女子なのだ、と顔をしかめて佐野さんに抗議するものの、彼女はどこ吹く風でニコニコとしている。
「篠宮はモテモテだって俺も聞いたぞ。そうなのか?」
矢沢さんが冗談めかしながらも、真相はどうなのかと聞いてくる。
私は首を横に振りつつ、隣にいる佐野さんに真剣な顔を向けた。
隣で聞いていた矢沢さんが爆笑しながら全否定してくれたのを見て、ホッと胸をなでおろす。
さすがに佐野さんの脳内妄想はこれ以上膨らまないだろう。
私は矢沢さんとは仲がいいけれど、一度も男として意識したことはなく、恋愛感情など微塵もない。それはきっと矢沢さんも同じはずだ。
「だけど篠宮さんって肉食系女子だから、グラッと来ません?」
かわいらしく首をひねりながら、佐野さんが失礼なことを言う。
先輩に対してもまったく遠慮がないし、彼女は本当に怖いもの知らずだと思う。
作ったような高い声も、猫のようにしなった体の動きも、私はあざとく感じてしまって実はあまり好きではない。
わざと空気が読めない発言をしてみたり、男性の前だと態度が違うことがあるので、佐野さんは典型的な“女子に嫌われるタイプ”だ。
彼女が私より年下で先輩後輩の関係だから、ある程度距離を置けるけれど、もしも同い年ならば絶対に友達にはなれないだろう。
「佐野さん、人聞き悪いこと言わないで」
誰が肉食系女子なのだ、と顔をしかめて佐野さんに抗議するものの、彼女はどこ吹く風でニコニコとしている。
「篠宮はモテモテだって俺も聞いたぞ。そうなのか?」
矢沢さんが冗談めかしながらも、真相はどうなのかと聞いてくる。
私は首を横に振りつつ、隣にいる佐野さんに真剣な顔を向けた。