ほろ苦彼氏の甘い口づけ
深々と頭を下げる店員さんに会釈し、その場を後にする。


ふふふっ、初めてデパコス買っちゃった。

購入したのは、深い赤のリップスティック。

限定色で、チョコレートにちなんで茶色が混ざった色味のもの。値段はおよそ時給6時間分。


普段の買い物にしてはかなり高額だけど……1年間頑張ってきた自分へのご褒美ってことで!



「あれ? もしかして華江?」



地下に続く階段を探していると、後ろから名前を呼ばれた。



「沢村! 久しぶり! 元気だった?」

「もちろん。そっちも元気そうだね。買い物してたの?」

「うん。さっき新しい化粧品買ったんだ」



小走りで駆け寄ってきた男性と挨拶を交わす。


赤茶色の髪の毛に、優しい印象の整った顔立ち。

一見育ちが良さそうなこの青年は沢村 宗星(さわむら そうせい)。中学時代の同級生で、司の友人でもある。



「沢村も……化粧品買ったの?」

「あぁ、うん。妹がこの前受験に合格したから、そのお祝いに」
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