マリアちゃんと鬼ごっこ
〝鬼であるマリアちゃんに捕まると人形にされる〟
そんなことできるわけないって頭では否定してるのに、櫻木と向井はマリアに切られた瞬間、本当に人形に変わってしまった。
その証拠にふたりはもうピクリとも動かない。
それはたった五秒ほどの出来事だった。
誰もがなにも言えず、なにもできず、ただただ重なるように倒れている櫻木と向井を見てるだけ。
女の子……いや、鬼のマリアの視線が二階にいる俺たちへと向いた。
なぜ強制的に鬼ごっこをしなくてはいけないのか、疑問は山ほどあるけど、説明文の中で一番引っ掛かったのは〝武器〟という言葉だ。
なぜ逃げるのに武器が必要なのか。
これは遊びでする鬼ごっこではない。
鬼は鬼でも相手は殺人鬼。
捕まったら人形にされる。
それはつまり殺されるのと同じこと。殺されないためには逃げなくてはいけない。あるいは……。
「みんな、あーそぼ♪」
マリアが無邪気な顔でにこりと笑う。
殺される前に、殺すしかない。
ノコギリの刃音を立てながら、マリアが校舎に入ってくる。
逃げる範囲は町全域。制限時間は五日間。
恐怖の鬼ごっこは俺たちの気持ちを置いてきぼりにしたまま、すでに始まっていた。