マリアちゃんと鬼ごっこ


「なあ、お前はマリアのことを間近で見たんだろ? どんな感じだった?」

「どんな感じって……なにが?」

「強い? 弱い?」

根本たちが死んだっていうのに、瀧川はその時の状況を詳しく話せと言わんばかりの顔をしている。

強いとか、弱いとか、そういう次元じゃない。

マリアは俺たちを殺すために探している。

見つかれば容赦はないし、あの時三花に手を引かれなければ確実に俺も人形にされていた。

「そもそも俺が逃げる側っていうのが気に食わない。なんであんなガキに追われなきゃいけねーの?」

「それは鬼ごっこだから……」

「だから村瀬は甘いんだよ。鬼ごっこは鬼が消えれば終了だ。あいつから逃げるんじゃなくて、あいつのことを追い詰めればいいだけの話だ」

「追い詰めるって、どうやって……」

聞き返したタイミングで、「アレを持ってこい」と瀧川が有野に指示を出した。有野が持ってきたのは赤色のポリタンクだった。

なにを思ったのか有野は古本屋の出入口にその中身を撒き始めた。

「な、なにしてんだよ?」

鼻腔を突くような灯油の匂いにむせりそうになる。

止める暇もなく有野はあっという間にポリタンクを(から)にしてしまった。そして、ポケットからライターを取り出している。

ま、まさか……。

「お、おい、やめろよ!」

俺は慌てて有野の手からライターを奪った。


< 44 / 112 >

この作品をシェア

pagetop