マリアちゃんと鬼ごっこ
「なあ、お前はマリアのことを間近で見たんだろ? どんな感じだった?」
「どんな感じって……なにが?」
「強い? 弱い?」
根本たちが死んだっていうのに、瀧川はその時の状況を詳しく話せと言わんばかりの顔をしている。
強いとか、弱いとか、そういう次元じゃない。
マリアは俺たちを殺すために探している。
見つかれば容赦はないし、あの時三花に手を引かれなければ確実に俺も人形にされていた。
「そもそも俺が逃げる側っていうのが気に食わない。なんであんなガキに追われなきゃいけねーの?」
「それは鬼ごっこだから……」
「だから村瀬は甘いんだよ。鬼ごっこは鬼が消えれば終了だ。あいつから逃げるんじゃなくて、あいつのことを追い詰めればいいだけの話だ」
「追い詰めるって、どうやって……」
聞き返したタイミングで、「アレを持ってこい」と瀧川が有野に指示を出した。有野が持ってきたのは赤色のポリタンクだった。
なにを思ったのか有野は古本屋の出入口にその中身を撒き始めた。
「な、なにしてんだよ?」
鼻腔を突くような灯油の匂いにむせりそうになる。
止める暇もなく有野はあっという間にポリタンクを空にしてしまった。そして、ポケットからライターを取り出している。
ま、まさか……。
「お、おい、やめろよ!」
俺は慌てて有野の手からライターを奪った。