【短編】桜咲く、恋歌にのせて

「アハハッ、ハハ」


何だかバツが悪そうにするヒデ。

首を傾げる私に向かって、ポツリと話しだした。


「いや、実は何度かここに来てて……」

「は?」

「だから、結依に会いに来たんだけど家にいなくてさ」

「はー? ばっかじゃない? 何で連絡しなかったの?」


信じられない、一体何してるの?

ここまでの交通費だってバカにならないのに。


「んー、何となく。願掛け? いなかったら諦めようかな〜みたいな」


私は盛大にため息をついた。

だけどそれだけ想われている私は幸せかなって。

心が温かくなってきた。


「一歩間違えればストーカーだね?」

「アハハッ、間違いない。まぁ結果オーライってことで、これからもよろしくな」


さっきまでのヒデはどこへやら。

歩きながら唇に軽くキスをしてきた。


一年前。

私の中で芽吹いた蕾が満開になり、ようやく春を迎えた。

ヒデが言う恋桜――。

二人でならこれからもずっと、咲かし続けることができる。

なんとなーく、そう思った。



あなたならどうする?



“咲かぬなら
燃やしてしまえ、恋桜”

“咲かぬなら
咲くまで待とう、恋桜”

“咲かぬなら
咲かせてみせよう、恋桜”



【END】



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