きみはカラフル




お姉さんの付き添いから弘也さんが帰ってきたのは、日曜の早朝になってからだった。
弘也さんは玄関に入るなり、出迎えたわたしをきつくきつく抱きしめた。
それはまるで、昨日の朝わたしが見送ったときにしたのと似たようなシチュエーションで、わたしは弘也さんの背中に手をまわして、彼を力いっぱいに抱きしめ返した。

昨夜はあまり眠れてないと言うので、「今日はゆっくり休んでて」と労わったけれど、弘也さんはわたしの勤務先のカフェに行ってもいいかと訊いてきた。
なんでも、今日中に仕上げたい仕事があるのに、家に一人でいたら眠ってしまいそうだからと、切実さが滲む頼みに、わたしは了承するしかなかった。

別に弘也さんがうちのカフェに来たとしても、何ら不都合はない。
自分の家族や恋人を店に招待するスタッフも多いし、待ち合わせに利用する人もいるくらいだから。
ただ、弘也さんに関しては、スタッフのほとんどが知ってる人だし、わたしもちょっと気恥ずかしいので、今まではあまりそういったことはしてこなかったのだ。

けれど今の弘也さんの状態を見ると、部屋で一人残すより、わたしの目の届くところにいてもらった方がわたしも安心できるように思えた。
()に変化があれば、すぐに対処できるからだ。
どうやら弘也さんの心配性な性格がいつの間にかわたしにも伝染していたようで、それが嬉しかったりして。

だがそんなことを思っていると、突然、胃の中のものが逆流してきそうな不快感に襲われた。









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