きみはカラフル




翌、日曜の正午、ぴったり時間通りに、玄関のチャイムが鳴った。

わたしもお出迎えする用意は整えていたので、扉を開ける直前の感情は、はじめてお会いするという緊張感のみだった。

けれど―――――


「お待ちしてました……」

その先の言葉は、驚愕の感情とともに、胸の奥に引き戻されてしまったのだった。




弘也さんのお姉さんには、()がなかったのだ。




わたしと同じ、無職透明。
それが、お姉さんの()だったのである。





「やっと会えたわね、加恵ちゃん」

「………は…い、そうです、ね……」

わたしの特異体質については何も知らないであろうお姉さんが、にっこりと、やわらかく微笑んで。
それが、やっぱり弘也さんと似ていて。
わたしは色んな意味で、ぎこちなくなってしまった。

ところがお姉さんが、まるでわたしの心を見抜いたように言ったのだ。


透明(・・)なのは、あなただけじゃないのよ?」



「――――っ?!」



ヒュッと、冷たい息を飲み込んだ。

わたしはそのまま、お姉さんを凝視するのをやめられない。
するとお姉さんは、

「ね?とりあえず、お邪魔してもいいかしら?話はそれからゆっくりと」

まるでイタズラが成功したように、楽しそうに、微笑みかけてくるお姉さん。
けれどそのまわりには、どこを見ても、やはり()がなかったのだった。









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