今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます
私の名前はミレルダ・シェイラン。

シェイラン公爵家の娘であり、目の前の彼。この国の王太子殿下であるマクシミリアン・セイフェルーンと来年の春に婚姻する運びだった。というのに、何を考えたのかこの馬鹿王子は婚約中だと言うのに私の義妹と想いを交わし、挙句婚約破棄したいと言い出したのだ。義妹とできてしまったのはまあ、仕方ない。仕方ないというかどうでもいい。今となっては。

今の私は随分冷静に物事を見られていると思う。長年の呪縛から解放されたおかげだろう。

私は今でこそ、こういった性格だったがつい一昨日までは今とは真逆の、正反対な性格をしていた。

「あら嫌だ、お忘れになった?十六年間、婚約者だったと言うのに。随分と薄情なお話ですわ。最も、真実の愛とやらを知ってしまった殿下には仕方の無いお話かしら」

「は。笑わせるな。お前がミレルダだって?信じられるか。今までのお前はもっと幽霊のような、影の薄い地味な女だっただろうが!」

婚約者を捕まえて地味とはこいつも大概失礼よね。いや、失礼という概念すらないのかもしれない。そもそも地味と言うが私は至って普通の、と言うより美人系の顔立ちをしていると自負している。侍女や友人の令嬢からもそう評価されているし、決して自惚れではない、と思う。ただ、確かに以前の私はあまりにも内気すぎた。発言は主に『はい』、『えっと…………』、『あ、あの』の三つ。これでよく会話が成り立ったなと我ながら思うほどである。

だけどこの性格を作り上げたのは他の誰でもない両親である。文句を言うなら公爵家に言って欲しい。最も、言われたところで私はどうでもいいのだけど。
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