今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます
私は手を掴まれたまま、どうするべきか瞬時に考えた。一刻も早くこの場を出たいというのは同意見だ。

味方かも分からない彼についていくのは危険かもしれない。そもそもなぜリヴァーロンの第二王子がここにいるのか。

この手を振り払って逃げるべきなのかもしれない。

そう思ったが、しかし万が一を考える。

もしリヴァーロン王国が何かしらの理由で本格的に私を探し始めたら。面倒くさいどころの騒ぎではない。リヴァーロンはこの国の比にならないほど大きな大国だ。余計な目はつけられたくない。

敵か、味方か。訳が分からない状況だが、しかしいざとなったらこの魔力を駆使して逃げればいい。そう結論づけて私はアリアス殿下の後に続いた。

爆発があちこちで起きる。私のかけた魔法は空気中の魔力に反応して連鎖的に爆発が起きるという簡単なもの。だけど、簡単だからこそ止めることが出来ず、その威力は凄まじい。

単純にいえば魔力なんて至る所に散らばっている。それに接触する度に爆発するのだ。今頃王宮魔法使いはてんやわんやだろう。私はアリアス殿下に従って誰もいない道を通っていくが、しかし人気が全くない。

恐らくみんな爆発のことでかかりきりで警護が手薄になっているのだろう。

───こんなので本当に大丈夫なのか、この国

私はそう思いながらもアリアス殿下に続いた。

階段を降りて、裏手に回って城を出る。そうすればすぐ近くに控えめだけど精巧なつくりの馬車があった。恐らくアリアス殿下はお忍びでこの国に来ていたのだろう。高貴な身分だということを隠すためにこの馬車にしたのかもしれない。だけど見る人が見れば、大層な作りだとわかるそれだ。

アリアス殿下にエスコートされて私は馬車に乗った。アリアス殿下もそれに続く。
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