セカイ、ホウカイ
「ん?梓沙、どうしたの?」
尚が心配そうに、私の顔を見る。
「うん。大丈夫だよ。気にしないで」
私は慌てて尚に言う。それにしても、あの子、不思議だ。私の知らない何かを知ってるみたいで…………
「じゃあ。可動の隣の席な」
「え?」
不意に呼ばれて、私は声を漏らす。
今、隣の席って言った?
うん。そうだ。じゃなきゃ女子があんな怖い顔するはずない。
「よろしく、可動さん」
「うん。よろしく、不道くん」
不道くんはふんわりと笑った。その顔が可愛かったとかは気にしないでおこう。


結論。不道くんは可愛くない。むしろ、カッコいい。
あんな、完璧少年、見たことないよ。
その言葉通り、不道くんは音楽、勉強、その他においても全く隙がない。その分、仲間からの信頼がとても厚いのだ。
「不道!今度、サッカーの練習試合、助っ人で出てくれないか?」
「おう!任せとけよ!」
不道くんも馴染んだのか、素を見せるようになった。
「不道くんが無邪気に笑ってるー!」
「可愛いー!」
そう言った可愛さを持ち合わせ、女子達を落としていく。
恐ろしい子だ。
しかし。そう言った平和も壊れてしまう。


ドォォォォォォォォンッ


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ


何かが落ちる音、地鳴りが鳴り響いた。

「せ、センセぇ!あれ!」
クラスメイトの女子の1人が魚市場を指差した。
魚市場から顔をのぞかせたのは大きな卵型の“何か”。それは帯状にバラバラになり、上下ゆらゆら動き出した。

「私は、世界崩壊の為に生まれた存在…………」

世界崩壊……だって……⁉︎

「生贄を1人捧げよ…………。もし、拒めば…………」

それからはたと声は聞こえなくなった。
「自分で確かめろって事か」
私はグッと拳を握った。
「先生……、世界崩壊って……」
尚が蒼白で尋ねる。
「何かのちょっとしたイベントみたいな感じでしょう。さっ!授業を「待ってください!」…………可動さん?」
私は、先生の言葉を遮った。
「先生、これはただのイベントで済まされる事じゃないはずです」
「可動さん……何を根拠に…………」
先生は呆れ顔で言う。
「先生!忘れたんですか⁉︎あの、1億年前の『地球崩壊』を!」
「あれは、もうとっくの昔の話よ。今更…………」
「先生ッ‼︎なら、イベントなら、名前は把握済みなんですよね?」
と言葉をつまらせる先生。
本当なんだ。
第二の世界創造––––世界崩壊が始まるんだ…………。
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