お願い、名前を呼んで。
土曜日の朝、会社へ向かう。

平日と違って電車は空いているし、乗っている人達も家族連れやカップル、友達同士と、皆んな楽しげだ。

そんな中、スーツを着て仕事に向かう自分も悪くはないなと思う。

それぞれに人生があって、皆んな、それぞれに「今」という時間を過ごしている。

オフィスに着くと、藤田さんは既にプレゼンの準備を始めてくれていた。

「おはようございます。すみません、遅くなって。」

「おはよう。遅くないよ、時間より早いくらいだ。」

「何からしましょうか?」

「こっちの準備はほぼ出来たから。じゃあ、悪いんだけど、コーヒーでも淹れてくれるかな。」

「はい、了解しました。」

私は給湯室で、お客様用に置いてある粉を使って、コーヒーを落とす。
忙しい時は、インスタントで済ませることも多いけど、今日ぐらいはいいだろう。

二人分をカップに入れて、藤田さんに一つを渡した。
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