白き髪のガーネット【改訂版】
***

「如何なさいました?ガーネット様」

離宮までの帰路。
私を乗せた馬を引いて歩いているアルトさんが、黙り込んでいる様子を気遣って声をかけてくれる。
普段アルトさんはクー兄様に付いてお仕事が多いからあまり二人で話した事はないけど、メルと同じでとっても優しい瞳で私を見てくれるから心から安心出来た。


「アルトさんはクー兄様とは幼馴染みですよね?
私の母様との関係って、聞いてますか?」

「!……えっ?」

私の質問にアルトさんはとても驚いた表情で見上げる。
”やっぱり”と、思うには十分な反応だった。

「……。
好き、だったんですよね?きっと、クー兄様は……母様の事」

「……」

すぐには答えず黙り込むアルトさん。
けれど、しゅんと俯いている私を見てかアルトさんがゆっくり口を開く。

「ハッキリと、クウォン様のお口から聞いた事はございません。
……けれど、確かに”特別”には見ていたと思います」

「……。そう、ですか」

アルトさんの返答を聞いて、思わず漏れる溜め息。


でも、落ち込んだのは一瞬だった。
悲しい、と言うよりも……私は悔しかった。

目の前からいなくなっても尚、クー兄様にあんな表情をさせられる存在に……。傍にいる私よりも心を掴んでいる、母様に。

ーーもっと、見てほしい。
クー兄様に、私だけを見てほしいっ……。

手綱を握っていた手にギュッと力が込もる。

「アルトさん」

「はい?」

「私に色んな事を教えて下さいっ!
クー兄様に関する事、全部!お願いします!」

もっと、知りたい。
誰よりもクー兄様の事を知りたい。

”誰にも負けたくない”という強い思いが溢れて、止まらなくなった。


13歳の私は、ただひたすらクー兄様を追いかけていた。
何も知らず、ずっと彼に恋をしていけると思っていたんだ。

……
…………。
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