私の好きな彼は私の親友が好きで

納入し、1週間が過ぎた頃、動作確認とメンテナンスを兼ねて
高遠ホールディングスの社長室でPCを操作していると、
ノックと同時に扉が開き、ランドセルを背負った女の子が入ってきた。
その子は俺を見ると小首を傾げ、悪戯ぽい笑みを浮かべ、
「パパ、浦島太郎の逆で凄く若返ったのね。素敵!」と言った。
あ~高遠社長のお嬢さんかと・・でも、その笑顔に、その瞳に
吸い込まれて動けなかった。
「じゃあ、パパと今から食事に行こうか。」
そう返したのは半分、ノリで 半分は本当に行きたかった。
その答えに満足したのか、彼女は素晴らしい笑顔を俺に返した。
それは人生の中で、出会った事の無い、
なんとも形容しがたい極上の笑顔だった。

手に入れたい。

そう、思った自分に自分が動揺した。
相手は小学生だ。
22歳の自分が小学生に・・
そう、思っても 未だ話したい!知りたい!との欲求に
取りつかれた。
だから父親の体で話しかける。

「今日は学校はどうだった?」
「うん。楽しかったわ。 家庭科で料理をしたの。」
「何を作ったの?」
「お魚のムニエル、ポテトサラダ、お味噌汁、」
「上手に出来たかな?」
「うん。とても上手に出来た!」
「じゃあ、今度 作ってくれるかい?」
(これは薫の本音だ。)
「うん。絶対作るね。その代わり 美味しい以外は口に
したらダメよ。」
「解りました。お姫様👸 約束だよ」
「針千本ね。」
美月ちゃん、その約束は覚えているかい?

でも、小学生に抱いた感情に戸惑った・・
当時、付き合っている大学の後輩が居たが、
その彼女に感じた事の無い感情に、もしかしたら自分は
ロリコンなのかもしれない。と帰りの電車の中で
悶々としていた。

それまで、自分から彼女を呼び出す事は無かったが
その日、自分が異常なのでは無い事を証明したく
初めて呼び出した。

後輩の彼女は嬉々として待ち合わせ場所に現れた。
可愛い子だったし、スタイルも良かった、そして
自分に向けた笑顔は、世の男性なら魅力的に映る笑顔だったが、
小学生の美月ちゃんの笑顔には遠く及ばなかった。

彼女が笑わないで来てくれたら、比べないで済んだかもしれない、
そうしたら、錯覚だったと思えたかも知れなかった。

その日、何回も何回も、後輩の彼女を抱いた。
抱きながら俺は彼女の顔なんて見ないで、美月ちゃんを
思い浮かべながら果てた。

流石に不味いと思い、電車の中で小学生を見ると警戒していたが、
自分が昂るのが、美月ちゃん限定と気が付いて安堵した半面
頭を抱えた。

寄りによって、恩人と言っても過言では無い、高遠社長のお嬢さんだ。
嫁に欲しいと何度も、喉まで出かかったのを、呑み込むのに苦労した。
それからも、何かにつけて、高遠ホールディングスに何度も足を運んだが、
彼女に二度と会う事は無かった。
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