私の好きな彼は私の親友が好きで

「あの、実は私も1つ報告と言うかお願いと言うか、許して欲しい事が・・
この、指輪なんですが・・・」
ギロっと睨まれた・・
「外すのはダメだよ!」
「外しません!ただ、会社に行く時は右手にしたいんです。」
「なんで?」
「新入社員で結婚していると言うのも・・」
「モテたいの?」
「そんな、私がモテるななんて事はありません!」
「美月は自己評価が低すぎる。ま、その方が良いんだけれど」
「結婚していると話すと、女子トークではお決まりの様に
そう言えば旧姓は何?と聞かれるんです。そうしたら・・
旧姓で嘘なんかつくより、新入社員が結婚しているなんて誰も
思わないですよね?そうしたら嘘を付かないで済みます。だから
右手に・・」
そう言って、結婚指輪と、同じデザインでダイヤとルビーが交互に埋め込まれた
誕生日にプレゼントされた指輪を眺める・・
薫も美月の言いたいことは大体理解は出来る・・なので渋々
「解った。その代わり家に着いたら直ぐに左手に。」
「ありがとう。」

高遠ホールディングスは面白い会社だった。
新入社員の間、1ヶ月間毎に、部署を移動して自分に合った部署を
見定める。そして、受け入れた部も、どの新入社員が、
自分の部署に合っているかを精査する。
新入社員の時に色々な部を周る事によって、会社にとって
不要な部は無いとい言う認識を、社員に持たせる為でもある。
1年間は新入社員は即戦力にはならないし、教育係の2年目の社員も
教育にかかりきりになるから、実質、3年目からが勝負の会社だ。
その実、適材適所だからか、離職者も少ない。
美月も最初は総務部からのスタートになり、
又、社長の娘だと言うのは重役の一部にしか知らされていないので
同僚との関係も順調に構築し始めている。

新入社員は殆ど残業が無いため、定時に会社を出れる。
逆に薫さんは殆ど、定時で上がれない為、美月が危惧しているよりも、
退社後に飯島コーポレーションに向かう事は少なかった。
朝も最初は警備員の人が怪訝な顔をしたが、私がネックレスタイプの
IDの使用者だと解ると、そんな顔も無くなったし、軽く挨拶程度は
するようになった。

慣れた頃に行われ始めた同期会も、薫さんに一次会だけならと、許可を渋々貰い
参加する事も出来ている。

会社にも、日々の生活にも慣れ始めた頃・・・
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