片翼を君にあげる①
***

午前中の花壇制作が終わり、一旦お昼休憩。
「ご飯だぁ〜!」と元気よく院の中へ入っていく子供達を見送り、私はズボンのポケットからポケ電を取り出すと、何かメッセージが届いていないか真っ先に確認した。
でも……。

ーー新しいメッセージも、着信もゼロ。

現実に打ちのめされて、ズキッと痛む胸。
でも、その胸の痛みは苦しくて辛い筈なのに、私はほんの少しだけホッとするの。
だって、この胸の痛みは、"私が今でも私なのだ"という証なのだから……。
 

「ーーレノアーノ様、お疲れ様でございました。どうぞ、こちらをお使い下さい」

「!……ありがとう。……あら?レベッカは?」

声を掛けられてハッとした私は、返事を返しながら辺りを見渡す。
いつもならボランティア活動が終わると必ず自分を迎えてくれるレベッカ。けど、今日はその姿が見当たらない。気になった私が、泥汚れを拭う為の濡れタオルを差し出してくれた使用人に尋ねると、驚くべき返答が返って来た。

「それが……。レベッカ様は現在、お嬢様を訪ねて来た者達の応対をしております」

「!……私を、訪ねて?」

「はい。初めは"ご友人"と偽った記者達かと思い警備に任せていたですが、レベッカ様が「私に任せて」と、自ら……」

「ーーッ!」

「!……あ、お嬢様!!」

まさかーーッ?!

使用人の話を聞いてそう思った私は、中庭をすぐに駆け出した。

私を訪ねて来た人物。
そしてそれをレベッカが対応。

レベッカはツバサを知って、彼を認めてくれている。私の為にいつも動いてくれる彼女が自ら対応してくれている。という事は……。

ーー私を訪ねて来てくれた友人って、もしかして!!

胸を弾ませながら私が向かうのは、孤児院を大きく囲む壁の正面にある正門。
"もしかして、もしかして"と膨らむ期待。ただがむしゃらに、私は走った。


「!……レノアーノ様ッ!?」

息を切らしながら辿り着くと、おそらくその必死さと泥だらけで駆けて来た私の姿にレベッカはとても驚いていた。
でも私は構わない。息つく暇もなく、問い掛ける。
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