片翼を君にあげる①

「お話の途中に大変申し訳ございません。失礼は充分承知の上です。
ですが。こちら側が捧げるものの件について、ぜひ夢の配達人の最高責任者(マスター)である私からお話させて頂けないでしょうか?」

突然の最高責任者(マスター)の登場に困惑する現場。
俺も、色んな事が信じられなかった。
最高責任者(マスター)がこの場に姿を現した事はもちろん、さっき彼が言った言葉。

夢の配達人を自由に手足として使える権利ーー?

それは、一体……。

「ーーこれはこれは最高責任者(マスター)殿。ご依頼した時振りですね。
いいでしょう。いや、ぜひお聞かせ願いたい。最高責任者(マスター)殿が先程申した件について、詳しく」

この場で唯一冷静だったサリウス様が、俺も聞きたかった質問を最高責任者(マスター)に尋ねる。
だって、俺は何も知らない。最高責任者(マスター)が乱入し、この後彼から告げられる事を、俺は知らなかったから……。

「ありがとうございます。では、申し上げます。
万が一、ここに居るツバサが1年以内に夢の配達人の最高位(トップ)に立てなかった場合。こちらがサリウス様に捧げるものは"夢の配達人上位10名を、貴方様の手足として自由にお使い頂く"というものです」

夢の配達人、上位10名ーー?
それは金バッジ7名、白金バッジ3名と言う事。

「現在サリウス様の元に身を置いているミライを筆頭に、上位10名を無償かつ順番待ちなしで派遣致します。
すでにその10名には説明済み、また了承を得ております。こちらが、その証文です」

驚き戸惑う現場で最高責任者(マスター)はそう告げると、(ふところ)から一枚の文書を取り出して、この場にいる全員に見えるよう広げた。
そこには確かに、さっき最高責任者(マスター)が言った内容と、ミライさんを含む上位10名の夢の配達人達のサインが……書かれていた。

俺の知らない間に、まさか、こんな……。

俺は信じられなくて、思わずミライさんの方を見る。
ミライさんは目を閉じていて俺を見てくれない。けど、微かに口元に、優しい笑みを浮かべていた。
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