片翼を君にあげる①

「ふぅ〜……」

夕食後。
俺はベランダに出ると、柵に肘を着いて一息ついた。

胃がはち切れそう。
てか、気持ち悪い……。

久々に姉ヒナタと兄ヒカルが二人同時に遊びに来て嬉しかったんだろうな。母さんは張り切って、せっかくみんな揃ったんだから少し早いけど俺の誕生日パーティーをしよう、ってなって、夕飯を大量に作った。
おまけにデザートにはでっかい誕生日ケーキが出てきて……。

「っ……さすがにキツ」

朝は生クリームたっぷりの甘いフレンチトースト、夜は生クリームがたっぷり塗られたスポンジケーキ。
ケーキに乗っていたイチゴが唯一の救いで最後に食べたが消しきれず、口の中にはずっと苦手な生クリームの甘さが残っている。

現在の状況は、母さんの前では平然を装って食べていたが、次第に胃もたれしてきて外の空気を吸いにベランダに来た、という訳だ。
すると……。

「ツバサ、大丈夫?」

「!……っ、なんだ姉貴か」

声を掛けられて一瞬母さんと似ている声に驚いたが、振り向いた先に居たのは姉だった。
姉は声もだが顔も母さんによく似ている。髪型がセミロングだからすぐに分かるが、髪を腰まで長くされたらパッと見他人には分からないだろう。
19歳で姉を産んで、母さんは現在44歳。見た目がいくつになっても若くて、よく姉妹に間違われるくらいだ。

姉はベランダに出てきてガラス戸を閉めると、隣に来て俺の頭をくしゃっと撫でる。
< 36 / 215 >

この作品をシェア

pagetop