片翼を君にあげる①

……どうやら今日は、左目を塞いでいても相手の感情を強く読み取ってしまう日のようだ。

これ以上、この優しい女性に酷い事を言わせたくない。
そう思った俺は、ミネア様の言葉を遮って言った。

「だから……」

「ーーご安心下さい。
本日私がここに来たのは兄の代理。特別な深い意味は何もありません」

様々な依頼を熟す夢の配達人は、演技をする役者のようなもの。色んな仮面を被って自分を隠し、依頼を達成出来る為の人物になりきる。

俺も元夢の配達人として、せめて最後くらいは凛としていよう。

「もう、ミネア様にもレノアーノ様にも会う事はないでしょう。
……どうかお元気で。アッシュトゥーナ家の繁栄を心よりお祈りしております」

胸に右手をあてて頭を下げると、「ありがとう」と言うミネア様の優しい声が聞こえた。

こうしてミネア様に別れの言葉を伝えられただけでも、俺が今日、ここに来た意味が少しはあったのではないか。……と、思えた。

……
…………。
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