契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 ……そうだ。
 主人公はあしながおじさんを"おじさん"だと思っていたけれど、本当は若い男性で、最後は主人公にプロポーズをするんだった!
 突然思い出した結末に、渚は唖然としてしまう。
 ……じゃあおじさんは、なんの見返りもなくボランティア精神だけで主人公を支えていたってわけじゃないってこと?

『あしながおじさんみたいなもんだよ』

 さっき自分で言った言葉が頭に浮かんで愕然としながら瀬名を見ると、彼はぷっと吹き出してくっくっと肩を揺らして笑い出した。
 そしてそのまま笑いながら寝室へと消えていった。
 バタンと閉まったドアを見つめたまま、渚はその場に立ち尽くす。
 もしかして、私早まっちゃったのかも……。
 でももはや、後には引けない状況だった。
 紳士的で優しいように思っていた瀬名先生にはどうやら別の顔がありそうだから、やっぱり結婚はやめましたなんてとてもじゃないけれど、今更言えるはずがない。
 どうあっても、この結婚を続けるしか渚には道はないのだ。
 まったく予想もしなかった展開に愕然として、渚はしばらくその場を動くことができなかった。

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