契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
危険な夜
 とっぷりと日が暮れた和臣の実家の屋敷。滞在中使わせてもらっている客間で、渚は途方に暮れていた。
 渚と和臣ふたりで使うには広すぎるようにも思える和室の真ん中にはふた組の布団。電気のついていない薄暗い部屋に敷かれたその布団が、ぴたりと寄り添うようにくっついているからである。

 これは……。

 本当の夫婦で使うなら全然おかしくないそのふたつの布団。
 でも形だけの夫婦である渚と和臣が寝るのには、少々差し障りがあると言わざるを得ない。
 この帰省の日程は二泊三日、今夜は二日目の夜だった。
 だから昨夜も渚と和臣はこの部屋でふたりで眠ったのだ。
 でも昨晩和臣は夕食後、地元の友人と出かけて渚が寝る時間に家にいなかったし、渚の方もみゆきと妙に気が合って、語り合いながら夜遅くまでたくさんお酒を飲んだから、部屋に来るなりあっというまに寝てしまった。
 朝目を覚ますと和臣は先に起きていて、すでに部屋にいなかったから、一緒に寝たという実感はまったくなかった。
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