契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
和臣の決意
 夜の街を和臣が乗ったタクシーが滑るように走る。和臣は苛々と奥歯を噛み締めながら、街路樹を睨んでいた。
 毎週出ているニュース番組の後、急遽入った打ち合わせの帰りである。突然の予定変更で、休憩や休日が潰れるのは、いつものことだった。
 それについてあれこれ思うことは普段の和臣ならありえない。
 だが今夜は、久しぶりに渚とゆっくり夕食を囲めると思っていたから、正直言って残念だった。
 特にテレビ関係の打ち合わせは、大抵仕事の話は初めだけで、後はただの飲みになるとわかっていたから尚更だった。
 だからといって、必要な打ち合わせなのだから、断るわけにもいかなかった。
 帰ったらテーブルの上には、渚が握ってくれたおにぎりがある。
 それを思い浮かべて、どうにかこうにか気持ちを切り替えて臨んだ打ち合わせで、和臣を待っていたのは、男性ディレクターからの意外な言葉だった。

『瀬名先生、週刊誌に狙われていますよ』
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