契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
幸せな朝
 温かい大きな手に頭を優しく撫でられているような気がして、渚の意識が浮上した。うっすらと目を開くと柔らかい朝の光。いつも目覚める時は自分ひとりのはずなのに、今日は誰かにすっぽりと包まれている。
 まだ夢の中なのかな。
 だったらもう少しだけ目を覚さないでおこう。
 そんなことを考えながら渚はその誰かに頬ずりをする。いい匂いで、気持ちよかった。
 なにも心配事のない幸せな夢。もう少しだけ、このままで……。
 でもその時。

「おはよう、渚」

 優しく声をかけられて、渚は驚いて目を開く。
 そして自分を包み込んでいるその人を見つめた。

「よく眠れたか?」

 和臣が微笑んだ。
 渚は目をパチパチとさせて辺りを見回す。
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