契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 本当に義兄は優秀な弁護士だと渚は思う。なにもかも彼の予想通りだった。女性の二十四歳にいったいなんの意味があるのかは不明だが、とにかく父は二十四歳になると結婚するべきだと思うらしい。
 結婚をして家庭を築く年齢だ、と。
 でもそれは、あくまでも父にとっての基準であって、自分のではないと渚は思う。少なくとも今の渚は結婚する気などさらさらない。
 やはり私にはふたつのミッションが課せられていたのだと渚は思いお腹にぐっと力を入れた。とりあえずひとつ目のミッションをクリアしなくては。
 渚はいつも寄っている父の眉間のシワをジッと見つめて、ゆっくりと首を振った。

「お父さん、私まだ結婚はしたくないの。だからお見合いはしないわ」

 言いながらこんな言葉で父が納得するわけがないと思うけれど、とにかく自分の希望を言わなくてはなにも始まらない。
 案の定、渚の言葉に龍太郎が目元を険しくさせた。
 小さい頃はその顔で叱られるのがとても怖かった。今も……平気だとは言えないけれどそれでもきちんと言わなくては。子供扱いされたくないと思うならば、尚更。
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