おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~


美佐が小学校に上がった頃、同じ『ひまわりの家』で生活していた1人の女の子が行方不明になった。
当初は警察に捜索願も出し探してもらったものの、その子には身寄りもなく、結局消息は掴めず彼女は見つかっていない。
契約していたアパートにも、就職が決まっていた百貨店にも連絡はないまま。

彼女を姉と慕っていた美佐は、過去に突然訪れた悲しい別れを昇華させるべく、また彼女が幸せでいると信じてイラストを書いた。

よく彼女が読んでくれた『私だけの王子様』という絵本になぞらえて、彼女と同じ名前だったメイドをヒロインにして描き上げたそのストーリーは、多くの読者の心を掴んだ。

彼女が姿を消してから、10回目の春が来る。
白いバラの装丁が美しいその本は、今日も『ひまわりの家』で読み続けられる。



――――そして、お城でメイドとして働いていたリサは、その一生懸命な人柄で国中の人々に愛され、素敵な王妃様になるのです。王子様とリサはたくさんの子宝に恵まれ、白バラの咲き乱れる王宮でずっとずっと幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。






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