おとぎ話の裏側~身代わりメイドと王子の恋~

いくら公爵家の姫だからといって、裏表のあるような見ず知らずの王子を花婿に迎えるのは嫌だろうと理解できる。

「明日の朝から5日間、リサには私と入れ替わってもらうから仕事はいいわ。家令のフィリップにも伝えてあるから心配しなくて大丈夫よ」

仕事をしなくていいと言われても、自分の仕事はシルヴィアの側にいて彼女に尽くすことだ。彼女は身の回りの世話をほぼリサに全て任せていた。部屋の水差しの交換や着替えひとつとってもリサがいなければ立ち往かないだろう。

そう考えて、はたと梨沙は気付く。
夢のわりに"リサ=レスピリア"の生活ぶりに詳しい自分。なんだかひとつの身体にふたつの人間が住んでいるようでおかしな感じだった。

今夢を見ているのは"日比谷梨沙"なのに、"リサ=レスピリア"としてここに存在しているせいだろうか。

「リサ?やってくれるわね?」

シルヴィアの期待に満ちた目を向けられ、思考が自分の内側から目の前の姫へと移る。

しかし、本当に花婿候補と言われる王子様にバレたりはしないんだろうか。それだけが心配だった。

梨沙はごく普通の容姿。
多少色が白くて肌が綺麗だと褒められることはあっても、決して美人という部類じゃないと自分では思っている。

絵本の中ではうまく入れ替わっていたけど、いざこうしてシルヴィアを目の前にすると、あまりの容姿の違いにうまくいく展開が霞んでいってしまう。

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