辺境の貧乏伯爵に嫁ぐことになったので領地改革に励みます
ブリアン夫人の口の堅さは有名だったから、試すように危ない橋を渡って見せる令嬢や夫人がけっこういた。
本に書かれた人たちは、「みんなデタラメだ」と騒いだが、ブリアン夫人以外にも目撃者がいるエピソードも多かったため、その人たちが騒げば騒ぐほど、本の内容は信憑性を増していった。
真偽を暴ける者がいない以上、本に書かれた内容は事実として王都に広まった。
中でもやはり注目を集めたのはエルネストの出生の秘密だった。
それまで大きな顔をしていたクレール侯爵家の人々は引きこもりになり、嫁ぎ先で威張り散らしていたエメリーヌは針の筵に座るような日々を送っているらしい。
そして何より、エルネストの妻となったシャルロットにも人々は注目した。
シャルロットの罪が暴かれた、まさにその日が「ベッドルームの秘密」の発売日だったことは、天が下した罰だったとしか思えない。
「エルネストの妻になった女はモンタン公爵の殺害を諮ったそうだ」
「シャルロットというアバズレで、以前、公爵令嬢を陥れたこともあるらしい」
「クリムに出入りしているところを見た」
王家ゆかりの者としてシャルロットは死罪を免れた。
世の中には事件が溢れている。自分のしたこともすぐに忘れられる。命さえ助かってしまえばどうにでもなると高を括っていたシャルロットは、虎視眈々と次の一手を模索していた。
まだ、貧乏であることに変わりはなかったからだ。
ところが、忘れられるどころか、シャルロットの悪事は日を追うごとにどんどん有名になっていった。ブリアン夫人の本が話題になるにつれ、盛大な尾ひれまでついて広まっていく。
ついには王国一の悪女としてシャルロットの名は全国津々浦々にまで知れ渡り、後世まで残ることになる。
実家のバラボー子爵家の爵位は剥奪され、領地は元の領主であるモンタン公爵家に返還された。
王の耳にも噂は届いた。
噂を元にエルネストの身分を剥奪することはなかったが、ベアトリス妃との間に長年あった唯一のわだかまりが融けたことを、王はひそかに喜んだ。
シャルロットとエルネストは、エルネストに支給される雀の涙ほどの手当てで生活することになったが、王都にはとてもいられず、実家にも顔向けできず、クリムの者からも恨まれたため荒んだ街にすら居場所を持てず、いつの間にかどこかに姿を消してしまった。
本に書かれた人たちは、「みんなデタラメだ」と騒いだが、ブリアン夫人以外にも目撃者がいるエピソードも多かったため、その人たちが騒げば騒ぐほど、本の内容は信憑性を増していった。
真偽を暴ける者がいない以上、本に書かれた内容は事実として王都に広まった。
中でもやはり注目を集めたのはエルネストの出生の秘密だった。
それまで大きな顔をしていたクレール侯爵家の人々は引きこもりになり、嫁ぎ先で威張り散らしていたエメリーヌは針の筵に座るような日々を送っているらしい。
そして何より、エルネストの妻となったシャルロットにも人々は注目した。
シャルロットの罪が暴かれた、まさにその日が「ベッドルームの秘密」の発売日だったことは、天が下した罰だったとしか思えない。
「エルネストの妻になった女はモンタン公爵の殺害を諮ったそうだ」
「シャルロットというアバズレで、以前、公爵令嬢を陥れたこともあるらしい」
「クリムに出入りしているところを見た」
王家ゆかりの者としてシャルロットは死罪を免れた。
世の中には事件が溢れている。自分のしたこともすぐに忘れられる。命さえ助かってしまえばどうにでもなると高を括っていたシャルロットは、虎視眈々と次の一手を模索していた。
まだ、貧乏であることに変わりはなかったからだ。
ところが、忘れられるどころか、シャルロットの悪事は日を追うごとにどんどん有名になっていった。ブリアン夫人の本が話題になるにつれ、盛大な尾ひれまでついて広まっていく。
ついには王国一の悪女としてシャルロットの名は全国津々浦々にまで知れ渡り、後世まで残ることになる。
実家のバラボー子爵家の爵位は剥奪され、領地は元の領主であるモンタン公爵家に返還された。
王の耳にも噂は届いた。
噂を元にエルネストの身分を剥奪することはなかったが、ベアトリス妃との間に長年あった唯一のわだかまりが融けたことを、王はひそかに喜んだ。
シャルロットとエルネストは、エルネストに支給される雀の涙ほどの手当てで生活することになったが、王都にはとてもいられず、実家にも顔向けできず、クリムの者からも恨まれたため荒んだ街にすら居場所を持てず、いつの間にかどこかに姿を消してしまった。