HONEYBEE(1)～アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚～

翌日、お兄ちゃんは退院。
その日の夜に智咲先輩の双子ちゃんたちと初めて顔を合わせた。
私と久世さんが同席する。

「この子達が仙波さんのご令嬢とご子息ですか？」

「えぇ、まぁ…二人とも挨拶して」

「このひとはだれ？ママ」

「だれ？」

咲ちゃんも匠君もお兄ちゃんに興味深々だった。

二人はジッと顔を見上げ、長身のお兄ちゃんを見つめた。

「お兄ちゃん…自己紹介しないと」

「あ…私は一ノ瀬瑠生…病院ではママに大変お世話になりました。そのお礼に三人にお部屋をお貸しする家主です」

「パパだとおもった・・・」

「おもった・・・」

「パパでは・・・」

独身のお兄ちゃんは突然パパと呼ばれ、激しく動揺する。

「一緒に住むんだし…パパでいいじゃないですか・・・社長」

「久世貴方！！？」

「パパじゃなくていいですよ・・・一ノ瀬さん」

「いえ・・・」

パパだと思い込み、残念そうに双子ちゃんはお兄ちゃんを見つめていた。
私は父と母が共に揃った環境で育って来た。お兄ちゃんも同様だった。
片親で育った人達のキモチはわからないけど。
目の前の双子ちゃんが不憫でならなかった。