あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
エレベーターが到着し、私は誰もいない廊下をずっと奥まで歩いた。


この先に…


本当にあの人がいるの?


ちょっとまだ半信半疑だった。


ドアに近づくにつれ、足取りがゆっくりになる。


どうして私、こんなに緊張してるの?


ただの…パンの配達だよ。


榊社長と会うのは配達を頼まれた時以来。


秘書の前田さんが『社長はかなり忙しい』って言ってた。


こんな大企業の社長さんなんだもん、当たり前だよね。


きっと今までも、時間を無理やりこじ開けて『杏』に来てくれてたんだろう…


それは、あんこさんのパンが好きだから。


でも、最近、榊社長がお店に来ないことはみんなも寂しがってる。


あんこさんも『あの綺麗な顔見ないと元気でないわぁ~』なんて言ってたし。


配達に行く私のこと『雫さんだけズルい』って、果穂ちゃんにもチクリと嫌味を言われた。
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