少年の日の思い出
第一章 始まりの物語。

客は夕方の散歩から帰って、私の書斎で私のそばにい腰掛けていた。
昼間の明るさは消え失せようとしていた。
窓の外には、色あせた湖が、丘の多い岸に鋭く縁取られて、遠くかなたまで広がっていた。
ちょうど、私の末の男の子が、おやすみを言ったところだったので、私達は子どもや幼い日の思い出について話し合った。
「子供ができてから、自分の幼年時代のいろいろの習慣や楽しみごとがまたよみがえってきたよ。それどころか、一年前から、僕はまたチョウチョ集めをやっているよ。お目にかけようか。」と私は言った。
彼が見せてほしいと言ったので、私は収集の入っている軽い厚紙の箱を取りに行った。
最初の箱を開けてみて、初めて、もうすっかり暗くなっているのに気づき、私はランプを取ってマッチを擦った。
すると、たちまち外の景色は闇に沈んでしまい、窓いっぱいに不透明な青い夜景に閉ざされてしまった。
私のチョウチョは、明るいランプの光を受けて、箱の中から、きらびやかに光り輝いていた。
私達はその上に体をかがめて、美しい形や濃いみごとな色を眺め、チョウの名前を言った。
「これはワモンキシタバで、ラテン名はフルミネア。ここらではごく珍しいやつだ。」と私は言った。
友人は一つのチョウを、ピンの付いたまま、箱の中から用心深く取り出し、羽の裏側をみた。
「妙なものだ。チョウチョを見るくらい、幼年時代の思い出を強くそそられるものはない。僕は小さい少年の頃情熱的な収集家だったものだ。」と彼は言った。
そしてチョウをまたもとの場所に刺し、箱の蓋を閉じて、「もう、結構」と言った。
その思い出が不愉快でもあるかのように、彼は早口にそう言った。
その直後、私が箱をしまって戻ってくると、彼は微笑して、巻きたばこを私に求めた。
「悪く思わないでくれたまえ。」
と、それから彼は言った。
「君の収集をよく見なかったけれど。僕も子どもの時、むろん、収集していたのだが、残念ながら、自分でその思い出を汚してしまった。実際話すのも恥ずかしいことだが、ひとつ聞いてもらおう」
彼はランプのほやの上でタバコに火をつけ、緑色のかさをランプに載せた。
すると、私達の顔は、快い薄暗がりの中に沈んだ。
彼が開いた窓の縁に腰掛けると、彼の姿は、外の闇からほとんど見分けがつかなかった。
私は葉巻を吸った。
外では、カエルが遠くからかん高く、闇一面に鳴いていた。
友人はその間に次のように語った。
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