いやな、やつ



「倉持?」


わたしもつられるように歩みを緩めると
倉持がまっすぐ私のことを見つめてくる。


私を心まで捕えるような眼差しに
視線を逸らすことなんてできない。



「…お前はさ、ほんと、バカだよな」



倉持の長い指先が私の首筋に伸びてきて
そっと触れた。

不本意だけど、ドキリとしてしまう。



「会えなくなっても忘れないようになんて、そんなの、本心なわけないだろ」


「え…」


「お互いの距離が離れても、通話なり手紙なり、いくらだって方法はあるのに。わざわざネックレスなんて贈るか?」



フンとバカにしたような倉持の態度に
私はムッとして言い返す。



「何が言いたいの?春ちゃんがたくさん時間と苦労をかけてネックレス買って、私にプレゼントしてくれたんだよ?それをバカにする気?」


「あぁするよ。回りくどくて吐き気がする」


「はぁ?!」


回りくどいのはあんたでしょーが!



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