メガネをはずした、だけなのに

「あっ、賢斗くん……」


 予想外の出来事に、私は驚いた。

 B組の担任教師と、賢斗くんが親密に何かを話し合っていた。

 A組の先生は蚊帳の外みたいに知らん顔をしてる。


「悪いな」


 賢斗くんは私に気づいて一歩下がり、先に用事を済ませるように手で合図をしてる。

 先生は食事を取らずに賢斗くんと話をしてた様子。

 凄く気になるけど、聞くことはできないし……


「綿貫、このプリント配っといてくれ」


「はい、わかりました」


 プリント用紙を受け取り、両手で胸に抱きしめたまま先生に一礼する。

 賢斗くんと私の視線が合って、短い時間だけどお互いに見つめ合ってしまう。

 職員室という特別な場所のせいもあって、胸がドキドキしてきた。


「なんだ、おまえら付き合ってるのか?」



 先生の言葉に、私の胸がぎゅっと締め付けられる。



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