メガネをはずした、だけなのに

 小走りで駆け寄りながら、彼の背中に向かって叫ぶ。

 すぐに立ち止まった賢斗くんは、振り返って目を細めクールに言ってくる。


「口には出してないけど、心の中で弓子に挨拶したぜ……」


 私は恥ずかしくて賢斗くんを直視できず、頬を赤く染めて顔を(うつむ)かせた。


「だったら、いいのかな……」


 カッコイイ仕草に動揺して、返事になってない。

 恥ずかしくて背中を向ける私をその場に残し、彼は学校に向かって歩き始めた。


「ちょっと、まってよ賢斗くん!」


 彼の名前は桜井 賢斗(さくらい けんと)くん、私と同級生の幼なじみ。

 賢斗くんと同じ高校に通学できるのは嬉しいけど、不思議な感じがする。



 中学校を卒業したら、外国に留学するって噂を耳にしてたから……



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