メガネをはずした、だけなのに

 相葉くんは鞄を手に取り、捨てゼリフを言い放って教室を出て行く。


「おぼえてろよ、金髪チビ!」


 廊下を走り去る相葉くんを見て、私は胸をなで下ろす。


「ありがとう、ニコル」


「いや、あたしは何もしてないけどね」


 私は安心して、思わずニコルを抱きしめてしまう。

 小さくて可愛い彼女の体温を感じて安心した。


 突然で驚いたけど、同級生の男子と体を密着させた状態で告白されるのは心臓に悪い。

 身構えずに言われたので、何も返答できなかった。

 申し訳ない気持ちもあるけど、この場で告白の答えを言えだなんて無理だよね。

 言動が予想できない、相葉くんらしいけど……


「ところで、こんな時間にニコルは一人で何をしてたの?」


 私は、疑問に思ったので率直に聞いてみる。

 ニコルは渋い表情をしながら、視線を横に向け言ってきた。


「保健室のベッドで寝てたんだけど、目が覚めたら放課後だった……」


 あきれて言葉も出ないけど、その偶然に私は助けられる。


 相葉くんへの告白の返事だけど、何も言えないまま本人が帰ってしまった。

 曖昧な態度はよくないけど、しかたないよね。


 でも、私が賢斗に対する思いは、小学校の時からゆるがない。



 大好きな気持ちは、これからも変わらないよ……




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