メガネをはずした、だけなのに

 私は顔を俯かせて、相葉くんから視線を外す。


「議題に入る前なんだが、綿貫くんの耳に入れておきたい事がある」


 何だろう、と思いながら聞き耳を立てている。


「さきほど、生徒会室でつまらない話を聞いてしまったものでね……」


 相葉くんと知り合いの生徒会役員さん。

 年上の女子生徒なんだけど、梨木くんの彼女さんと一緒のクラスみたい。

 朝から凄い不機嫌だったらしく、原因は私のようで、長く付き合ってる年下の彼氏に手を出してる子が一年の同じクラスにいると騒いでたようだ。


 しかも、学級委員長とまで知られているようで、なんとも不本意な感じ。

 相葉くんと同じ教室の子だと思って、生徒会役員さんが知らせてくれたようだ。

 色々と教えてくれて助かった、相葉くんには感謝してるよ。


 梨木くんの彼女さんとは、なるべく接触しないように避けていくしかない。

 顔を合わせれば、身に覚えのない言い掛かりを付けられてしまいそう。


「綿貫くん、そろそろ議題にはいろうか」


「はい」


 目の前に立つ相葉くんにも、はっきりと告白の答えを伝えないと。

 などと心の中で思ってるけど、断った経験もないので口に出して言いづらい。


 色々な思いが頭の中を駆け巡り、集中できないよ。


 なんとしても、トラブルだけは避けたいな……




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