毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


「どういうこともなにもないわよ。その女は昔っから愛想が悪くて、こっちが歩み寄ろうとしてもそれを無下にして、なんでも上手く出来るからって周りを見下して冷めた目で見てきて……挙句の果てには彼女持ちの男と仲良くして破局させるような、下劣な奴よ!」


私に会ったことで不満が爆発したのか、一気に早口で息継ぎもなくペラペラとあることないこと吹き込まれた。


前半に関しては私でも自覚しているし、集団で群れるのが嫌いだったからクラスでの交流に誘われて断った回数が一回ではないことも事実だ。

しかし、後半のそれは被害妄想が過ぎるというものである。

見下すと彼女は言ったが、そもそも周りを気にするほど自分と他者を比べることをしない。


興味がないのだ。


それはそれで酷いと思う人もいるだろうけど、とにかく人のステータスや努力を鼻で笑うようなことをした事がない。


あとは、彼女持ちの男と仲良く、だっけ?


男の子と噂が立つようなことをした記憶がないのだから、火のないところにも煙は立つんだなとしみじみ思う。


大方、私の学校生活の中での必要最低限の関わりを持つことになった彼女持ちの男の子が、私に接して好意を持ってしまって別れることになった、とかそんな話だろう。


こういう、持たない者からの嫉妬というのは今に始まったことでもないけど、それでも決して慣れるものではなく、非常に理不尽で面倒くさい。


彼女が慎くん相手に目力で信じて欲しいと訴えかけているのを横目に、バレないようにふぅ……とため息をついた。

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